社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

会社法

他律決定

会社法の基本にあるのは、企業維持の理念、企業活動円滑の理念である。つまり、会社という法人の利益を第一に考え、それを構成したりそれの機関だったりする個人の利益は劣後させるのである。そのことによって、結局は会社をめぐる利害関係人の総体としての…

株主総会と民事訴訟

株主総会も民事訴訟も、複数の人々が意見を出し合って問題に対してひとつの結論を出すと言う意味では共通している。だが、もちろん様々な違いがある。(1)手続の適正迅速の要請について 民事訴訟では、公の資源である裁判所を使用するため、無駄のない適正…

会社の行為の内容

例えば会社が募集株式を発行する場合、199条1項各号に掲げられた事項(募集株式の数など)、すなわち募集株式発行の内容を会社は定めなければならない。だが、内容の定まらない募集株式の発行などそもそも不可能ではないか。なぜ、会社法はいちいち会社…

権限の構造

381条1項は、監査役の権限として、取締役の職務執行の監査を挙げている。だが、監査役の権限はこれだけではない。監査役の権限は、(1)他の権限や義務の目的となったり、(2)他の権限や義務の手段となったり、(3)その権限の手段を媒介に他の権限…

比較

会社法の諸制度を、似た制度と比較してみると面白い。 例えば、定款の絶対的記載事項と、人間の戸籍記載事項。27条を見てみよう。定款には、会社の目的、名前、所在地、財産、代表者を書かなければならない(あえて不正確に書いた)。だが、ある人の戸籍に…

権利能力と責任

権利能力と責任(Haftung,一般財産が引き当てとなる地位)はどうやら別物のようだ。つまり、権利能力あるところに責任が生じる、という包含関係にはない。それは、(1)人的担保(2)会社制度のところで明らかになる。 まず、人的担保とは、債務を負ってい…

売買価格の決定の申立

通常の売買契約において、売買価格についての交渉が決裂すれば、売買は成立しない。そこに裁判所が介入して売買価格を決定して契約を成立させるなどということは私的自治への介入であり、裁判所の決めた価格では売りたくない、買いたくないという人の自律権…

対抗要件

株式譲渡は、譲受人の氏名・名称、住所を株主名簿に記載・記録しなければ、株式会社・第三者に対抗できない(130条1項)。ここでは第三者対抗要件と対会社対抗要件が同一のものであるが、両者の性質は異なる。第三者対抗要件は、二重譲渡のような事例で権利…