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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

刑法学

行政行為と科刑

行政行為とは、国民の権利義務・法律関係を直接権力的に具体的に確定する行為のことであるが、刑罰を科する行為もまた、この行政行為の要件に該当しないだろうか。科刑もまた、国民の義務を直接具体的・権力的に形成するものだからだ。 さて、行政行為が違法…

法人処罰

独禁法95条には、法人の代表者や従業者が違反行為をしたとき、違反者だけでなく法人も処罰するとしている。判例は法人処罰・両罰規定の根拠を他人の違反行為に対する監督義務違反の推定に求めている(過失推定説)。ところで法人は責任主体になりえるのだ…

情報罪

犯罪と言うと、有形的暴力によって法益侵害が引き起こされるケースが良く想起されるが、無形的情報によっても法益侵害は引き起こされる。情報を利用した犯罪というものがあるのだ。これは特に刑法典に体系づけられているわけではないか、情報を操作すること…

法律上保護された利益と保護法益

取消訴訟の原告適格は、行訴法9条によって、当該処分・裁決を取り消すにつき「法律上の利益」があるかどうかによって判断される。ところで、これは刑法で言う保護法益論と同じことを言っているのではないか。つまり、国家が保護する利益というものは、あら…

可能性と危険性

行為者が犯罪の計画を立て、予備をし、実行に着手し、既遂に達する。この過程は、通常は結果発生の危険性の増大の過程としてとらえられている。だが、逆に見れば、それは、結果発生以外の出来事が起こる可能性が縮減していく過程と見ることもできる。計画を…

自由意思

平野龍一は『刑法の基礎』で次のように書いている。 刑罰も、人間のもつ法則性を利用して、将来行為者および一般人が同じような事態のもとで犯罪を行なわないように新たな『条件づけ』を行おうとするものにほかならない 一般に刑法的非難の根拠は、行為者に…

非難

刑事責任は行為者への非難によって根拠づけられるとされるが、この非難というものも、いくつかの段階で別々に観念することができる。 行為者は、まず、(1)非違行為についての意思を抱く。次に、(2)規範障害を乗り越える。さらに(3)実行行為をする。…

『犯罪と刑罰』1−6

ベッカリーアの『犯罪と刑罰』を読んでいく。 まず、刑罰権の基礎にあるのは社会契約である。自然状態の闘争状態から抜け出すため、人々は自由の一部を差し出して、他の自由を確保することにした。だが、この社会契約を実効あらしめるためには違反者を処罰し…

マネジメントサイクル

plan→do→see→plan→do→seeを繰り返すのがマネジメントサイクルだ。このサイクルは主に行政法で問題にされている。つまり、行政機関が計画を立て、それを実行し、その結果を事後的に評価し、次の計画に生かしていく。 だが、このサイクルはおよそ人間の行動を…

存在しない人に対する義務

刑法が国民に課する「他人に危害を加えてはならない」という義務は、国民の国に対する義務である。国民がこの義務に違反したとき、国家に対する義務違反だとみなされ、それに対する制裁が基礎づけられる。国家が制裁権を有する以上、「他人に危害を加えては…

賄賂の罪と契約

公序良俗違反の契約は無効であるが、そのような契約のうち、公務員の職務の公正とそれに対する信頼を害するような契約を処罰するのが賄賂の罪である。この契約は、公務員が賄賂と引き換えに不正な職務を行うという請負契約のようなものであろう。賄賂の罪で…

保護法益の侵害

犯罪は基本的に物理的世界で行われる。故意等の主観的要素は物理的ではなく観念的かもしれないが、何らかの外形的・物理的な事実のないところでは、基本的に犯罪は成立しない。不作為犯は確かに外形的な「行為」を必要としないが、作為義務者が不作為である…

予想もしない動機・行為

実行行為と結果発生の間に介在する事情のうち、特殊な事情は相当因果関係の判断において判断基底から除かれる。だが、実行行為自体が、行為者や一般人が予想もしないものだった場合はどう考えたらよいのか。あるいは、実行行為の動機が予想もしないものだっ…

職務の適法性

公務執行妨害罪においては、職務の適法性が「書かれざる構成要件」として要求されるとされている。だが、職務の適法性は構成要件要素というよりは違法要素なのではないだろうか。 傷害罪は、被害者の同意がある時、違法性が阻却される。これは、同意によって…

目的犯について

目的的行為論、つまり、構成要件的結果発生という目的を志向して因果経過を支配するのが刑法の「行為」だとする立場からは、あらゆる故意犯は目的犯と同質である。つまり、例えば故意殺人罪は殺人の目的を有する者を処罰する犯罪であり、主観的構成要件要素…

保護法益論

世界には因果の網の目が張り巡らされていて、一つの行為をすればそこから因果的に様々な出来事が生じてくる。そのさまざまな出来事のうち、あるものはある人の利益であるかもしれないし、あるものは別の人の不利益かもしれない。行為から因果的に生じてくる…

ベルクソンと危険・結果無価値

ベルクソンは、世界は常に新しく創造されていくと考えた。だから、可能性というものは事前的には存在しない。結果が発生して初めて回顧的にあの時可能性があったと判断されるに過ぎない。つまり、実在性が可能性に論理的に先行するのである。世界が常に更新…

危険犯について

危険犯を分類するに際して、「そこで問題となっている法益が特定か不特定か」、という基準を立てることができると思う。特定の法益の侵害の危険が問題となるのが、例えば遺棄罪である。遺棄された人間は特定されていて、その人の法益が危険にさらされている…

刑事責任の根拠

高山佳奈子は『故意と違法性の意識』において、刑事責任の根拠を実質的行為責任論に求めている。特別予防の必要性が責任を根拠付け限定するとする。犯罪者は犯罪行為を通じて自己を侵害的なものとして示した以上、その者を再社会化するために責任が生じ刑罰…

傷害に関する罪?

刑法は256条で盗品等に関する罪を処罰しているが、同じように「傷害に関する罪」は処罰できないだろうか。本犯の既遂までに関与すれば傷害の共犯または共同正犯だが、本犯の既遂後に傷害罪に関与して何らかの法益侵害を惹起できないだろうか。 例えば、本…

情報・伝達

犯罪を行うには、情報を収集する必要があることが多い。例えば強盗だったら、相手が年寄りで盗みやすいとか、相手の家の場所とか、どうすれば効率的に多額の金を盗めるか、とか。これは単独犯の場合だが、共犯だったら教唆犯・幇助犯による正犯への情報の提…

故意と悪意

故意も悪意も、ともに特定の事実の認識であるという意味では同じである。だが、故意と悪意には様々な違いがある。 まず、(1)故意によって認識される事実は、認識主体の行う事実であるが、悪意によって認識される事実は、取引の相手方などの状態についての…

山口厚『危険犯の研究』

危険犯の研究 (1982年)作者: 山口厚出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 1982/09メディア: ? クリック: 4回この商品を含むブログ (2件) を見る まず、危険判断の方法を定式化しているところが注目すべき点だ。(1)判断の基礎、すなわちいかなる事実を…

窃盗罪は危険犯?

択一を解いていると、窃盗罪がどの段階で既遂になるかの判断が求められる。だが、占有が移転したという法益侵害の発生は、例えば人が死んだという法益侵害の発生ほど客観的に判断できるものではない。裁判例によると、留守中に財物を運び出す準備をした時点…

利益の促進?

「アクチュアル刑法各論」を読んでいたら、住居者が複数いて、彼らの間で進入の同意不同意が分かれている事案で、住居侵入罪が成立するかどうかについて、「同意者の利益が不同意者の不利益を上回るなら住居侵入罪は不成立」、みたいな説明があって驚いた。…

作為と不作為

作為犯と不作為犯にそんなに大きな違いがあるのだろうか。作為犯と不作為犯の区別は、実行行為は原則的に「外形的に」存在しなければならないというドグマに基づいていると思うが、外形的であるかどうかは、犯罪論にとって本質的な問題ではないのではないだ…

付け加え禁止?

条件関係の判断で、現実化しなかった仮定的事情を付け加えてはいけないと言われる。行為者が2丁拳銃を持っていて、右手の銃で被害者を殺害した場合、「仮に右手の銃で撃たなかったとしても左手の銃で撃って具体的に同じ結果を引き起こせたのだから条件関係…

心理的関与

民法総則の詐欺・強迫が、刑法の詐欺罪・恐喝罪とある程度対応するのは分かる。しかもこれらは両方とも被害者を保護する規定である。ただ、民法の意思表示の瑕疵の規定は、自由な意思決定の利益を保護するのに対し、刑法の詐欺・恐喝は、財産上の利益を保護…

応報

応報という概念がいまいちよく分からなかった。一般予防や特別予防はよく分かる。なんらかの社会的利益を実現するために特定の制度を作るというのはよくあることで、刑罰制度もそのひとつと考えることができるからだ。 応報刑論というのは、カントに由来する…

故意の内容

故意があるとは、構成要件に該当する客観的事実を認識し(認識的要素)、その内容を実現する意思(意思的要素)をもつことである。だが、構成要件該当事実とはどの範囲まで含むのだろうか。 例えば殺人罪(199)の構成要件は「人を殺」すことだが、人を殺…

逆刑法

刑法は構成要件に該当し違法で有責な行為を罰する。 だが、ここで「逆刑法」というものを考えてみよう。刑法には悪が列挙されているのに対し、逆刑法には善が列挙されているとする。刑法の「罪」に対して、逆刑法には「徳」があるとしよう。例えば死にかけて…

疑問

小林憲太郎が「因果関係と客観的帰属」(弘文堂)の冒頭で、条件関係公式と結果回避可能性の話は同じことだと言ってるのだが、まともな説明がなされているわけでもなくはなはだ不親切である。なので自分で考えてみる。 まず、条件関係は構成要件の段階の話で…

民事責任と刑事責任

人を殺せば殺人罪に問われ、また不法行為責任を負い損害賠償をしなければならない。だが、これはひとつの行為に対して二重の罰を与えていて不合理なのではないか。懲役刑を受ければもうお金は払わなくても良い、あるいは、お金さえ払えば懲役刑は受けなくて…

談合罪の特殊性

談合罪(96条の3第2項)における「談合」とは、公の競売・入札において、競争者が互いに通謀して、ある特定の者をして契約者たらしめるために、他の者は一定の価格以下または以上に入札しないことを協定することを言う(最決昭28・12・10)。だが…

■因果関係 因果関係はこの世界に充満している。私がこのようなブログを書いている原因は法律学を勉強したことである。私が法律学を勉強した原因は私の職に就こうという決意である。何も人が殺されたときにだけ因果関係が働いているわけではないのである。 そ…