社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

憲法学

辻清明『日本の地方自治』(岩波新書)

日本の地方自治 (岩波新書 青版 957) 作者: 辻清明 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1976/02/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 憲法や行政法で地方自治制度を学んだ人にとっては、大枠において特に新しく学ぶような点はないと思う。ただ、地…

保障・許容・禁止

憲法は様々な人権を保障する。保障するということは禁止するということと表裏である。表現の自由の保障は、国家による表現の自由への不当な介入を禁止する。また、憲法は国家に様々な行為を禁止する。禁止と保障も表裏である。検閲の禁止は、表現の自由の保…

内藤淳『自然主義の人権論』

自然主義の人権論―人間の本性に基づく規範作者: 内藤淳出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2007/04/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 25回この商品を含むブログ (12件) を見る 人権は普遍的なもの、前国家的なものだと憲法の通説は教える。だが、歴史的…

特殊的人権と一般的人権

なぜ表現の自由についてだけ、そのプライバシー権的側面が抽出され、わざわざ憲法に通信の秘密として保障されているのか、疑問である。思想良心の自由にしろ、内心を推知されない自由が当然そこから導かれるとされている。あらゆる人権の行使には何かしらの…

人権の公益的側面

憲法前文には、国民主権・平和主義・国際協調主義が掲げられているが、不思議なことに個人の尊厳の原理が書かれていない。だが一般に、人権は究極的には13条の「個人として」の「最大の尊重」原理に基づくとされている。だが、人権の尊重の根拠は、主観的…

知る権利

知る権利は、もっぱら、表現の自由や参政権とのかかわりで論じられている。だが、ものごとを知るという働きは、もっと広範で根本的なものではないだろうか。 知ることには、事実知と技術知があるとされる。事実知とは、「XはYである」といった命題形式の知で…

解釈の違憲

法令の合憲限定解釈が、刑罰法規の明確性の原則(31条)に反して違憲になることはないだろうか。 例えば、最大判昭60・10・23は、「淫行」という語の意味を、青少年の未成熟に乗じた性的行為、自己の欲望を満足させるだけの性的行為、に限定している…

司法府と立法府

憲法の違憲審査は可能か。つまり、憲法の諸規定が互いに矛盾することを裁判所は審査できるか。これができるとする憲法の規定はない。例えば表現の自由とプライヴァシー権の両方を保障するのは矛盾のような気がするが、12条の公共の福祉の規定を介在させて…

最判昭36・9・6

原告が、所得税の確定申告で二分二乗方式で申告したら更正処分を受け審査請求をしたところ棄却されたのでその取り消しを求めた事例。取消訴訟の違法性として、所得税法の前提とする民法762条1項が憲法24条に違反すると主張。つまり、民法では夫の名義…

地方自治体

会社、地方自治体、国家という三つの集団を比べてみると、地方自治体を特徴づけているのはその地理性(空間性・物理性)だと思う。地方自治体は成り立ちにおいて会社と区別され、その機能において国家と区別される。 会社は特定の目的の実現のために人々や資…

資源

国を動かすには、人とモノとカネと情報が必要だ。国家がそれらを調達する際、国民の意思に基づかずに権力的に調達することがある。人については、選挙や試験によって調達され、これは立候補や志願による国民の意思に国が応えるという形であり、権力性は弱い…

立法事実

違憲審査においてなぜ立法事実が出てくるのか分からなかった。違憲審査とは憲法と法律との何かしら論理的な関係を審査するのかなあと漠然と思っていた。だがそれは違う。 法律による人権制限は、公共の福祉による人権制限である。公共の福祉が人権に優越する…

人権確認の訴え

憲法というものはろくに仕事をしていないように思える。法律というものが、事実をもとに効果を発生させるという仕事をせっせとこなしているのに、憲法はたまにその法律が自分に適合しているか適合していないか裁判所に判断させているだけに思える。つまり、…

国は何をやっているのか

国家は一体何をしているのか。おそらく、(1)事務処理、(2)意思形成、(3)意思表示、これらの連鎖をしているのである。それぞれのものについて、それを司る機関の自由にゆだねられているか、それとも自由が制限されているか、の区別ができる。そして…

選挙の公正

「不平等は悪だ」と言われるが、世の中には許される不平等がある。たとえば、頭脳明晰な人間が大学教授になるのは、頭の良さによって人間を差別しているのだから不平等である。だが、その不平等が許されるのは、「適材適所」が社会全体の効用を増すという信…

自分についての決定と他人についての決定

自分のことは自分で決める、それが憲法の保障する自己決定権や自由権である。この原則が集団において発現するとき、それは純粋な民主制であろう。つまり、自分たちのことは自分たちで決める、という原則である。 ところが、自分一人でいる分には自己決定は自…

代表

代理とは結局何をやっているのだろうか。たとえば売買契約を代理人が代理する場合、本来なら本人がするはずの意思表示を、本人の命ずるがままに、かわりに行うのである。契約書にサインする場合、通常なら本人は自分の手を使う。自分の手を使う代わりに代理…

所有権

憲法29条1項は私有財産制を制度的に保障したものだとされる。だが、ここでは「財産権」と書かれるのみで、その具体的内容は法律で定めるとしている(同条2項)。おそらくそれを受けているのだと思うが、民法206条は物の所有者に使用収益処分権能を与…

「基本法」

固有の意味の憲法とは、権力のありかを定める法のことであり、立憲的意味の憲法とは君主の権力を制限するという内容を備えた憲法である。形式的意味の憲法とは、その最高規範としての形式的効力に着目したときの憲法概念であり、実質的意味の憲法とはその内…

勤労の義務

憲法の義務規定は、具体的な法的義務を定めたものではなく、倫理的指針、あるいは立法による義務の具体化の予告程度の意味しかないとされる。27条1項の勤労の義務もまた、法的義務ではない。 ところで、野中他「憲法I」では、生活扶助などを受けるために勤労…

「象徴」としての天皇

憲法1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 憲法学における「象徴」は、 (1)目に見えないものを目に見えるもので表すことであり、 (2)象徴されるものと適切な関係を結び、 (3…