社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

民法学

被害者側の過失

過失相殺とは結局何を行っているか。それは、損害を発生させた原因が競合したときに、被害者が寄与した分については、自分で自分に害をなしたのだから、相手に対して賠償請求することはできない、という基本的態度の表れではないだろうか。自業自得の部分に…

代理占有

民法上、代理は法律行為についてなされるものである。ところが、民法上、本人の代わりに誰かに何かをやってもらうというのは、法律行為の場合に限られない。準委任の場合がそうである。事実行為でもそれを要件として法律効果が発生する場合がある。本人が準…

期待

民法の意思表示の規定は、意思主義と取引の安全の調和を図るものだと言われる。心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫。自らの意思に従って自らの在り方を決めるという、人間の自律性の尊重は民法の基本的な価値だ。一方で、取引の安全・相手方の信頼という…

成年後見と意思能力

民法7条は、本人も後見開始審判の請求ができるとしている。でもこれはおかしくないか。というのも、成年被後見人になるべき者というものは、同条にあるように「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」であり、これは意思無能力のことを言っているように思…

最判昭44・12・18

原告の夫が、原告の特有財産である不動産を被告に勝手に売ってしまったので、原告が被告に対して所有権移転登記抹消手続を請求した事例。被告が原告の夫の意思表示が日常家事の範囲内であると信じるにつき正当な理由があれば110条の趣旨を類推適用して被…

最判昭36・9・6

原告が、所得税の確定申告で二分二乗方式で申告したら更正処分を受け審査請求をしたところ棄却されたのでその取り消しを求めた事例。取消訴訟の違法性として、所得税法の前提とする民法762条1項が憲法24条に違反すると主張。つまり、民法では夫の名義…

婚姻意思と心裡留保

男と女がいるとする。男は本心では結婚する意思などないが、女は結婚する意思がある。そこで婚姻届を出す。この婚姻は有効だろうか。心裡留保の規定を適用すると、女が善意無過失だとすると婚姻は有効であり、男は婚姻の効力としての同居・協力・扶助義務が…

組合について

組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる(667条1項)。この文言からすると、組合を作る行為というものは双務契約であって、組合員に出資をさせ、組合規約などにより組合員の行動を規律し共同の事…

受益・負担の意思表示

第三者のための契約において、第三者の権利の発生の時点は、受益の意思表示の時点だとされる(537条2項)。「受益の意思表示」というのは、何か特別なことをしているようにも思える。普通の二当事者間の契約には存在しない要素であるかのように見える。…

牽連性

双務契約について、成立上の牽連性、履行上の牽連性、存続上の牽連性があるとされる。これは、等しい経済的能力を持つ者たちが、等しい負担をする場合には、等しく扱いましょう、という考えだと思われる。つまり、同じ人たちは同じく扱おうという法の適用の…

予約

予約の存在意義とはなんだろう。契約の内容が定まっているのなら、条件付法律行為、期限付法律行為をすればよい。「一ヵ月後にバイクを売りますからそのとき10万円を払ってください」という期限付契約は、現在において成立し、一ヵ月後に効力を生じる。 予…

賄賂の罪と契約

公序良俗違反の契約は無効であるが、そのような契約のうち、公務員の職務の公正とそれに対する信頼を害するような契約を処罰するのが賄賂の罪である。この契約は、公務員が賄賂と引き換えに不正な職務を行うという請負契約のようなものであろう。賄賂の罪で…

物権的請求権

物権的請求権は、占有の訴え(197−200)をもとにして、占有権にすらそれらの訴えが認められているのだから所有権にも当然それらの訴えに類似したものが認められるだろう、という考慮に基づいて実体法上認められている。それは、返還請求権、妨害排除請…

債権譲渡する債務

将来債権も現在の時点で譲渡可能だとされる。だが、存在しないものを譲渡するというのはそもそも不可能ではないか。だから、将来債権の現在譲渡の実質は、債権の発生を停止条件とする債権譲渡契約なのではないだろうか。そうすれば、存在しないものの譲渡と…

意思と判断

裁判とは、裁判所の「意思」や「判断」を外部に表示する行為であるとされる。だが、ここでなぜあえて「判断」の表示まで裁判に含めているのであろうか。民法や行政法だったら、意思の表示を行為としてとらえていて、判断の表示は特に行為としてとらえていな…

故意と悪意

故意も悪意も、ともに特定の事実の認識であるという意味では同じである。だが、故意と悪意には様々な違いがある。 まず、(1)故意によって認識される事実は、認識主体の行う事実であるが、悪意によって認識される事実は、取引の相手方などの状態についての…

権利能力と責任

権利能力と責任(Haftung,一般財産が引き当てとなる地位)はどうやら別物のようだ。つまり、権利能力あるところに責任が生じる、という包含関係にはない。それは、(1)人的担保(2)会社制度のところで明らかになる。 まず、人的担保とは、債務を負ってい…

法定追認

125条は不思議な規定だ。履行などの事実行為がなされたとき、それが追認(意思表示)とみなされるのである。つまり、事実行為を法律行為とみなす規定だ。あるいは、事実行為が黙示の意思表示とみなされているのである。 詐欺と知りながら、債務を履行する…

期待権

条件付法律行為というものも可能である(127)。例えばXが車を買ったときにその付属品をXY間で売買しようと約したとき、契約は現在成立するが、その効力が発生する=債権債務が発生するのはXが車を買ったときである。条件が成就するまで、それでは売買契…

随伴性

債権譲渡がなされたとき、その債務を保証する債務もその債権に付属して移転する。これが随伴性の問題である。では、物が譲渡された場合、使用収益処分権が移転するのは随伴性の問題だろうか。しかし、所有権の内容自体が使用収益処分権なのであり、所有権が…

物権と債権

債権だって物に対する権利だと思う。金銭債権だって、札束を引き渡す身体的行為を要求しているわけで、物(札束)を渡す物(身体)を、その引き渡す瞬間拘束し支配しているのである。労働債権だと、債権の「物」性が如実に現れる。労働関係において、使用者…

物権と債権

物権は物を直接支配する権利、債権はその実現に人の行為を必要とする権利、と言われる。だが、そんなに単純でもないような気もする。 たとえばある人が放射性物質を所有しているが、それを利用するにあたって常に専門家の助力が必要だとする。そうすると、物…

所有権

憲法29条1項は私有財産制を制度的に保障したものだとされる。だが、ここでは「財産権」と書かれるのみで、その具体的内容は法律で定めるとしている(同条2項)。おそらくそれを受けているのだと思うが、民法206条は物の所有者に使用収益処分権能を与…

二種類の具体化

仮に私が、そろそろ古くなったから携帯電話が欲しい、と思ったとしよう。この段階では、欲求の対象は「携帯電話」という抽象的なものに過ぎない。次に、私は予算を考える。2・3千円でいいか、と決めたとしよう。すると、欲求の対象は「2・3千円の携帯電…

保存義務

特定物売買において、特定物債権の目的である特定物の所有権は、通説によれば、契約時に買主に移転する。契約成立後、引渡までの間、特定物の売主は他人の物を預かっているのである。いわばこれは一種の「寄託」状態であろう。 無償の寄託契約においては、受…

心理的関与

民法総則の詐欺・強迫が、刑法の詐欺罪・恐喝罪とある程度対応するのは分かる。しかもこれらは両方とも被害者を保護する規定である。ただ、民法の意思表示の瑕疵の規定は、自由な意思決定の利益を保護するのに対し、刑法の詐欺・恐喝は、財産上の利益を保護…

日常家事連帯責任

組合的家族観によれば、日常家事とは夫婦共同体の共同事業であり、そこから生じた債務は夫婦が共同出資した組合財産からまず弁済される、として761条を説明する。この観点からは、条文には明示されていない夫婦の相互代理権も、代表者が組合財産を権限の範囲…

債務

債務とは何かと考えたときに、ただ漠然と「何かをする義務」と考えていると他の義務との区別がつかなくなってしまう。思うに、債務とは民法の体系の全体の中で、民法の条文や諸概念との関係の中に位置づけられる機能的概念である。 とりわけ、債務と債務不履…

心裡留保の絶対的構成

虚偽表示の事例で、ABが通謀してAからBへ甲を売った場合、虚偽表示行為のあとに取引関係に入った善意の第三者Cは保護される。さらに、Cからの転得者Dは悪意であろうと、絶対的構成によれば保護される。 心裡留保でも事情は同じではないか。Aが真意に反しそれ…

意思のけんけつ

虚偽表示の規定は権利外観法理を規定したものといわれるが、錯誤、心裡留保も外観法理に基づいているのではないか。 内心的効果意思と合致しない表示行為が行われたとき、信頼の対象となる外観(表示行為)は存在するが、外観法理の適用にあたっては、それに…