社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

郭四志『脱炭素産業革命』(ちくま新書)

脱炭素産業革命 (ちくま新書) 作者:郭四志 筑摩書房 Amazon 気候変動などの抑止に向けたカーボンニュートラルの推進のための最近の技術革新について詳細に解説している。CO2削減のため、洋上風力発電の拡大、燃料アンモニア産業の拡充、水素を利用した技術開…

渡名喜庸哲『現代フランス哲学』(ちくま新書)

現代フランス哲学 (ちくま新書) 作者:渡名喜庸哲 筑摩書房 Amazon 哲学史として哲学の教科書に載っている哲学者以降の現代フランス哲学について概説している本。フーコー、ドゥルーズ、デリダというと誰でも知っていると思うが、そういったビッグネーム以降…

濱口桂一郎『家政婦の歴史』(文春新書)

家政婦の歴史 (文春新書) 作者:濱口 桂一郎 文藝春秋 Amazon 家政婦についての労働法上の位置づけの歴史的変遷について書いた本。家政婦の前の時代には女中がいた。女中とは家の一員として家父長の支配下にあり、起きてから寝るまで主人の命令に従って無限定…

改善している

子どもが生まれてから、0歳、1歳のときはとにかく大変だった。核家族で育児をするのは本当にたいへんなので、各種サービスや給付金の制度を整えていただきたいと強く願っている。だが、2歳になるとたいへんさもだいぶ改善されたように思う。なぜかという…

子育て世代の苦心の休み方

小さな子供を育てていると、休日でもあまり休めないし、年休をとるのも子どものイベントだったり、妻が体調が悪くなったため自分が代わりに子守をするためだったり、溜まった買い物の処理だったりする。とにかく心底休んだ気がしない!!おまけに生計のため…

郭四志『産業革命史』(ちくま新書)

産業革命史 ――イノベーションに見る国際秩序の変遷 (ちくま新書) 作者:郭 四志 筑摩書房 Amazon 産業革命の歴史について詳述した本。第一次産業革命は、イギリスで起きた動力・エネルギー革命を中心として、蒸気機関の発明をもとに工場制機械工業が始まった…

L.ハンケ『アリストテレスとアメリカ・インディアン』(岩波新書)

アリストテレスとアメリカ・インディアン (岩波新書 青版 D 63) 作者:ルイス ハンケ 岩波書店 Amazon スペインのアメリカ大陸先住民への過酷な扱いを糾弾したラス・カサスの思想と生涯を描いた本。スペインの先住民支配には思想的根拠があった。それは、アリ…

笹尾俊明『循環経済入門』(岩波新書)

循環経済入門 廃棄物から考える新しい経済 (岩波新書 新赤版 1987) 作者:笹尾 俊明 岩波書店 Amazon 循環型社会から循環経済への移行を唱える書。日本の循環型社会とEUの循環経済(サーキュラーエコノミー)では、ともに天然資源の効率的な利用や廃棄物・環…

シドニー・W・ミンツ『甘さと権力』(ちくま学芸文庫)

甘さと権力 ――砂糖が語る近代史 (ちくま学芸文庫) 作者:シドニー・W・ミンツ 筑摩書房 Amazon 砂糖の生産と消費をめぐる世界システムに着目した本。17・18世紀の世界システムの作用によって、砂糖は生産し消費されたが、そこには奴隷制度やプランテーシ…

不祥事について

不祥事が起きると、不祥事を起こした当人が制裁を受けるだけでなく、その当人の所属する組織などのイメージが悪化する。不祥事が起きた場合、それが組織に所属する者の行いであるならば、組織は謝罪や懲戒などの対応に追われ、通常業務に大きな支障をきたす…

姫野桂『ルポ 高学歴発達障害』(ちくま新書)

ルポ 高学歴発達障害 (ちくま新書) 作者:姫野桂 筑摩書房 Amazon 高学歴だけれど仕事ができない人たちのルポルタージュ。発達障害を抱えながらも、学業では優秀な成績を修め、良い大学に入るが、いざ就職してみると事務仕事ができない、そういう人たちが多数…

松本勝男『日本型開発協力』(ちくま新書)

日本型開発協力 ――途上国支援はなぜ必要なのか (ちくま新書) 作者:松本勝男 筑摩書房 Amazon 日本による途上国への開発協力について詳細に論じた本。日本の開発協力は、自由主義や民主化などの価値の普及を目指す欧米や自国の経済的利益を求める新興国の開発…

仕事と家庭

仕事と家庭を両立するのはいつの時代でも働く人々にとって難問である。特に、私は子どもが生まれてからそれを痛感している。子どもは現在2歳4カ月。今までとても手がかかったし、これからもまだまだ手がかかるだろう。問題はこの子供の面倒をだれが見るか…

吉見俊哉『大学は何処へ』(岩波新書)

大学は何処へ 未来への設計 (岩波新書) 作者:吉見 俊哉 岩波書店 Amazon 現代日本の大学の失敗を、日本の大学の歴史にさかのぼって検証した重厚な本。戦争末期から占領期にかけて大学を再定義する際、理工系の圧倒的優位、初中教育から高等教育までの単線性…

村木厚子『公務員という仕事』(ちくまプリマー新書)

公務員という仕事 (ちくまプリマー新書) 作者:村木 厚子 筑摩書房 Amazon 厚生労働事務次官を務めた著者による公務員入門。公務員は人の役に立つ仕事をするが、利益を生まず、収支が合わない事業でも社会に必要であれば行うところが民間企業とは違う。また、…

渡辺一史『なぜ人と人は支え合うのか』(ちくまプリマー新書)

なぜ人と人は支え合うのか (ちくまプリマー新書) 作者:渡辺 一史 筑摩書房 Amazon 障害者についての認識を改める本。障害者というと、健常者の対義語のように用いられ、哀れで無力な存在のように思われがちである。だが、様々なケアを必要とする意味で、我々…

超越の技法

組織で働いているといろんなことが気になるものだ。基本的に淡々と仕事をこなしていればいいのではあるが、例えば人間関係であったり、人事であったり、組織で働く人ならではの気になることがいろいろある。場合によってはある人に悪口を言われ続けてストレ…

ナンシー・フレイザー『資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか』(ちくま新書)

資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか (ちくま新書) 作者:ナンシー・フレイザー,江口泰子 筑摩書房 Amazon 資本主義の本質に根差す社会制度としての欠陥を暴き出し、資本主義の棄却と新たな社会主義の構想を示す本。資本主義は、被差別人種から土地・資源…

石田光規『「人それぞれ」がさみしい』(ちくまプリマー新書)

「人それぞれ」がさみしい ――「やさしく・冷たい」人間関係を考える (ちくまプリマー新書) 作者:石田 光規 筑摩書房 Amazon 個人を尊重する「人それぞれ」の考え方の功罪について書いている本。現代において個性が尊重され多様性が受け入れられている結果、…

三木那由他『会話を哲学する』(光文社新書)

会話を哲学する~コミュニケーションとマニピュレーション~ (光文社新書) 作者:三木 那由他 光文社 Amazon 言語哲学の観点から会話を分析している。会話という行為は、コミュニケーションとマニピュレーションを含む営みである。コミュニケーションとは発言…

頑張っては体調を崩し

Eテレの幼児番組にピタゴラスイッチというものがある。そこに出てくるキャラクターにねずみのスーというものがいる。このスーというねずみは働き者でみんなの役に立つのだが、定期的に熱を出して休んでしまう。このようなタイプの人は結構いないだろうか。 …

宇佐見英治『石の夢』(筑摩書房)

石の夢 (宇佐見英治自選随筆集) 作者:宇佐見 英治 筑摩書房 Amazon 宇佐見英治の詩人としての面目躍如たるエッセイ集である。石に対するみずみずしい感性、「石を食べたい」と感じるような飛躍した感性、そこに宇佐見が全き「外部」と接触しまさに「創造」を…

斎藤環『「自傷的自己愛」の精神分析』(角川新書)

「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) 作者:斎藤 環 KADOKAWA Amazon 自分のことを言葉で罵倒する癖のある人が相当数いる。そういう人たちがどのような精神構造でそのような行為を行っているかについて分析している。そういう人たちは「自傷的自己愛」を抱…

魂の断捨離

結構前から断捨離がはやっている。本当に大事なものだけ残してあとは捨てていきましょうという考えである。これはモノだけでなくて、自分の考え方についても当てはまるのではないか。要するに、必要最低限のこだわりだけ残して、余計なこだわりは捨てていこ…

カリド・コーザー『移民をどう考えるか』(勁草書房)

移民をどう考えるか: グローバルに学ぶ入門書 作者:カリド・コーザー 勁草書房 Amazon 移民についてコンパクトにエッセンスをまとめて論じている本。移民に関する定義と概念を明らかにし、最新のエビデンスに基づき移民に関する諸問題に取り組むべきである。…

チェノウェス『市民的抵抗』(白水社)

市民的抵抗:非暴力が社会を変える 作者:エリカ・チェノウェス 白水社 Amazon 市民的抵抗とは、非暴力的な抵抗であるが、大きな政治的譲歩を勝ち取るうえで武装闘争よりも有効である。市民的抵抗とは、デモであったりボイコットであったりストライキであった…

郡司ペギオ幸夫『創造性はどこからやってくるか』(ちくま新書)

創造性はどこからやってくるか ――天然表現の世界 (ちくま新書) 作者:郡司ペギオ幸夫 筑摩書房 Amazon 独特な芸術創作論。一人一人が状況の中にあえて二項対立的なものを見出し、肯定的・否定的矛盾の共立を構想するとき、そこには外部が召喚され、全き外部と…

畑中章宏『宮本常一』(講談社現代新書)

今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる (講談社現代新書100) 作者:畑中章宏 講談社 Amazon 特異な歴史学の境位を開いた宮本常一についての紹介。宮本は時代的にも早いうちからフィールドワークの重要性に気付いていた。民俗学の系譜にありながら、…

明日香壽川『グリーン・ニューディール』(岩波新書)

グリーン・ニューディール 世界を動かすガバニング・アジェンダ (岩波新書) 作者:明日香 壽川 岩波書店 Amazon グリーン・ニューディールという世界的な動きについて解説している。再生可能エネルギーについてはコモディティ化が進んでおり、すでに多くの国…

櫛原克哉『メンタルクリニックの社会学』(青土社)

メンタルクリニックの社会学: 雑居する精神医療とこころを診てもらう人々 作者:櫛原克哉 青土社 Amazon メンタルクリニックの来歴や現状についてまとめた博士論文ベースの本。メンタルクリニックの患者は、自身の苦悩と向き合うとき、紆余曲折し、自分が本当…