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統計的・確率的思考

 法律を制定するとき、統計的・確率的思考も加わっているのかもしれない。

 例えば法定相続分は、子と配偶者がいるときは、子が1/2で配偶者が1/2(民法900条1号)、子が複数いればそれをさらに等分する(900条4号)。これはおそらく、遺言を残さない死者の合理的意思を推定したもので、もちろん公平性という価値基準に従ってはいる。だがそれだけではなくて、「社会の多くの人間は、自分の財産をこのように分配することをよしとするだろう」「このように分配する確率が高いだろう」という統計的・確率的思考にももとづいているのではないか。

 法律は、理念的には、国民の支持がなければ成立しない。よって、国民の大多数が支持するであろう規則が法律として成立するわけで、その問題に対する規律として適切だと評価される確率が高い規律方法が法律として成立する。もちろん専門技術的な立法裁量が必要となる法領域では専門家の合理的価値判断が法律の規定を左右することも多いだろう。だが、基本的な規律については、国民がどの立法選択肢をどれだけ支持するかという統計的・確率的考慮によって、実際に制定される法律の内容は左右されるように思われる。