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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

同居の強制

民法学 判例

 大決昭5・9・30は、夫婦間の同居義務の履行について間接強制をすることは許されないとしている。その理由として、債務者が任意に債務の履行をするのでなければ債権の目的を達成できないときは、その債務は性質上強制履行を許さない、ということを挙げている。つまり、夫婦の同居はいやいやながらなされても同居の目的は達成できないから、強制しても意味はないということだ。同居の目的とは、お互いに愛情を持って扶け合ったり性交渉を持ったり夫婦としての社会的生活をしたりすることだと思われる。

 同じ継続的な債務でも、例えば離婚した男が子の養育費を定期的に払う場合はどうか。男がいやいやながら払っても債権の目的は達成されるだろうか。仮に養育費債権の目的が、男の、子に対する愛情の表明であったら、いやいやながら養育費を払っても債権の目的は達成されないことになる。だが、多くの場合、養育費債権の目的は性質上子の養育に必要な金銭を得ることであり、そこに男の愛情が込められていようがいまいが関係ない。だから養育費債務は履行を強制できるはず。

 ところで、本当に同居の強制は無意味なのだろうか。同居を一定期間強制することでお互いの話し合いの機会が生まれ、よりを戻すことだってあるのではないか。初めは嫌だった同居も、再び愛情が生まれるきっかけになることがあるのではないか。任意に債務を履行しない場合でも、債権の目的が達成されることもありうる。少なくとも同居義務を要求している原告は、同居を望んでいるわけだし。だが、お互いの話し合いで解決がつかず裁判にまでもつれ込んだわけだから、被告の同居を拒む気持ちはかなり強いのが通常だろう。そうするとやはり同居を強制しても無意味ということになりそうだ。

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