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社会科学読書ブログ

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伊方原発訴訟判決

 最判平4・10・29は、内閣総理大臣に原子炉設置許可処分についての要件裁量を幅広く認めているにもかかわらず、裁量統制としては裁量濫用型審査ではなく実体的判断過程統制審査の手法を用いている。これはなぜだろうか。行政庁の裁量が広く認められるのならば、行政庁の判断の方が裁判所の判断よりも優先され、裁判所は立ち入った判断ができないのが原則のはずである。

 これは恐らく、原子炉設置許可処分が、周辺住民に対して与える影響力の強さを反映している。設置される原子炉に瑕疵があれば、周辺住民には生命・身体への重大な侵害が生じる恐れがある。それゆえ、処分の性質にかんがみて、裁判所が行政庁の判断をより立ち入った形で審査する必要があったのだろう。

 しかも、審査基準・判断過程の合理性の立証責任は行政庁に転換されている。もちろん証拠が行政庁の側に偏在しているというのもひとつの理由だろうが、原子炉設置許可処分の違法性が認定される可能性を増すことにより、より慎重で瑕疵のない処分のみを許容するためでもあるだろう。

 伊方原発訴訟判決は、本来広範な科学技術的裁量が認められるはずの処分について、処分の重大な危険性にかんがみて、密度の高い裁量統制をしているのである。

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