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権利

 権利には私権と公権がある。私人との関係における権利と、国家との関係における権利である。

 そして、権利には(1)積極的側面と(2)消極的側面がある。権利を行使できるという積極的側面と、権利の侵害を防ぐという消極的側面である。所有権だったら、使用収益処分する資格が積極的側面であり、物権的請求権を行使する資格が消極的側面である。

 さらに、権利の積極的側面には、(1A)権利を自己完結的に行使する側面と、(1B)権利を実現するために他者の行為を要求できる側面がある。

 所有権だったら、使用収益処分は基本的に他者の行為を必要とせず自己完結的である(譲渡は他者の行為を必要とするが)。だから基本的に(1B)を欠いている。それに対して債権は、自己完結的な側面はなく、もっぱら他者の行為を要求する積極的側面のみを有する。だから(1A)を欠いている。

 面白いのは人権である。例えば表現の自由は、まず(2)その消極的側面として国家による介入を排除できる。さらに(1A)自己完結的な積極的側面として実際に表現行為ができる。その上(1B)表現の自由を充分行使できるために国に助成金など何らかの作為を要求することができる可能性がある。つまり、人権は、ものによっては、国家との関係において、権利の(1A)(1B)(2)というすべての側面を備えうるのである。それに対して、私人との関係において、物権は(1B)を欠き、債権は(1A)を欠く。