社会科学読書ブログ

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学んだこと

 金曜日に指導教官と話していて、なるほどと思ったこと。

(1)自分の主張する立場を充分に根拠づけず、特定の立場を前提に論を進めても、そもそもその立場を受け入れない人に対してはなんら説得力を持たないということ。例えば、「統一的正犯概念は拒絶すべきだから、正犯と共犯を区別できる因果性概念を案出しなければならない」と言ったとしても、そもそもなぜ統一的正犯概念を拒絶すべきなのか明らかにしなければ、統一的正犯概念を受け入れる人たちにとってはなんら説得力はない。

(2)特定の立場を否定したいのなら、その立場をとったときにどのような具体的な不都合が生じるのかを明らかにする必要がある。具体的な法適用の場面で結論が異ならないのならば、そもそも理論的な対立をする意味がない。これは法律学が実学であり、法律学が裁判規範の形成に貢献すべきものだからである。

(3)議論の場面に応じて、特定の概念の意味合いを変えるのは、理論刑法学としてはその理論性に反するがゆえに妥当でない。例えば、因果関係論において結果概念を厳密に具体的なものとしているにもかかわらず、結果回避可能性の議論や、幇助行為と不可罰的関連行為の区別の議論では、結果概念を抽象化しているのは妥当性が疑われる。

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 関係ないが、「君は研究者に向いている」と言われて嬉しかった。