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公定力と形成判決

 行政行為の違法性は取消訴訟で争うことになっている。行政行為の効力を否定できるのは、職権取消、取消訴訟、不服申立だけであり、その手続的制限から反射的に、公定力なる実体的効力が論じられたりする。

 雇用契約の解除(解雇)は、その効力を特定の訴訟形態で争わなければならないということはなく、その無効を前提として雇用契約上の地位確認訴訟が起こせる。それに対して、公務員の懲戒免職は、その効力を取消訴訟で争わなければならず、取消訴訟で行為を取り消した上で地位確認訴訟を提起できる。言い換えれば、地位確認訴訟では、懲戒免職の効力を争えないのである。

 ところで、株主総会決議取消訴訟などの形成の訴えは、形成判決が確定しない限り当該法律関係を他の訴訟の前提問題としても主張しえず、効果は形成判決によって形成される。とすれば、株主総会決議には「公定力」があることにならないだろうか。また、婚姻の取り消しも形成の訴えであるから、婚姻には「公定力」があることにならないだろうか。