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 消費貸借契約にもとづく金銭債権を被担保債権として担保を設定するというのはよくあるが、売買代金債権や請負代金債権を被担保債権とするというのは聞かない。売買契約は双務契約だから同時履行(民533)であり、原則としてその場で代金を支払うから担保は問題にならないのかもしれない。だが、引渡しを先に履行して、代金の弁済期を遠い将来に設定したような場合は、売買代金債権を担保する必要も出てくるのではないか。請負の場合は報酬の支払い時期は目的物の引渡しと同時である(民633)。仕事の完成に時間がかかるような場合は、請負代金債権を担保する必要も出てくるのではないか。担保の設定の趣旨を、「債権を実現できる時期が将来であるためそのときに相手方が無資力であった場合の危険を回避すること」と考えるのならば、上記のような考察も可能なような気がする。