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「基本法」

 固有の意味の憲法とは、権力のありかを定める法のことであり、立憲的意味の憲法とは君主の権力を制限するという内容を備えた憲法である。形式的意味の憲法とは、その最高規範としての形式的効力に着目したときの憲法概念であり、実質的意味の憲法とはその内容に着目した憲法概念である。

 近代的な憲法は、そもそも、絶対王政における国王の権力を制限し国民の自由を保障するものとして成立した。現代ではそれだけではなく、社会福祉的な諸権利の保障という役割も果たしている。

 憲法は、そのような成り立ちのため、その規律範囲におのずと限界がある。だから、ひとつの国家に存在するすべての法律が憲法に基礎を持っているわけではない。例えば、日本国憲法は、刑事手続についていくつかの条項を定めているが、「国家は犯罪を犯した者を罰することができる」という刑事実体法の基礎となる原則を直接にはどこにも定めていない。

 そこで思いつくのは、日本に存在するすべての法律を基礎付けることができる「基本法」(ドイツのGrundgesetzとは別物)なるものである。あらゆる法律は「基本法」を具体化したものとして観念できる、そういう法である。これは、権力の制限とか、社会福祉国家の実現といったイデオロギーとは直接には無関係であり、純粋に体系的・理論的に要求される法形態である。日本にどんな法律があるのかは、「基本法」を見れば分かる、そういう法である。だが、そのような法を定立する必要性はあるのだろうか。よく分からない。