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対抗要件

 株式譲渡は、譲受人の氏名・名称、住所を株主名簿に記載・記録しなければ、株式会社・第三者に対抗できない(130条1項)。ここでは第三者対抗要件と対会社対抗要件が同一のものであるが、両者の性質は異なる。第三者対抗要件は、二重譲渡のような事例で権利を失わないために防衛的・消極的に備えられると思われる。だが、対会社対抗要件は、それをもとに会社に対して株主としての権利を主張していく足がかりとなるものであり、権利の実現のための積極的な要件であろう。

 さて、対会社対抗要件であるが、これは会社の事務処理の便宜のために要求されるとされている。第三者対抗要件を度外視した場合、権利の譲渡の規制には三段階ある。ひとつは、(1)何も規制しない場合。不動産の売買がこれにあたる。次は、(2)その譲渡に関与する者への対抗要件が必要な場合。債権譲渡における債務者対抗要件、株式譲渡における対会社対抗要件がこれにあたる。最後に、(3)その譲渡に関与する者の承諾が必要な場合。賃借権の譲渡、譲渡制限株式の譲渡がこれにあたる。権利の譲渡がある者(株式会社、賃貸人)の支配領域内で行われる場合、その者が譲渡に利害関係を有する以上、その者は何らかの形で譲渡に規制を加えてくるのである。