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保存義務

 特定物売買において、特定物債権の目的である特定物の所有権は、通説によれば、契約時に買主に移転する。契約成立後、引渡までの間、特定物の売主は他人の物を預かっているのである。いわばこれは一種の「寄託」状態であろう。

 無償の寄託契約においては、受寄者には「自己の財産に対するのと同一の」注意義務が課されるに過ぎない(659条)。これは無償であることに着目し注意義務を軽減したからである。だが、売買契約の売主が引渡まで目的物を占有しているとき、それは無償の寄託とは言えないだろう。買い取り価格には、引渡しまで保存することの代金も含まれていると解するのが妥当である。とすると、買主は有償の寄託をしているわけであり、売主には原則どおり善管注意義務が課される(400条)。

 さて、特定物売買において、契約成立後引渡までの間、当事者には寄託契約の規定がある程度準用されてもよいような気がする。例えば、売主は、買主の承諾を得なければ、目的物を使用し、または第三者にこれを保管させることができない(658条1項)など。

 なお、売主が商人であれば、仮に寄託的に構成するならば、商法593条により、保存義務は当然善管注意義務となる。

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