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物権と債権

 物権は物を直接支配する権利、債権はその実現に人の行為を必要とする権利、と言われる。だが、そんなに単純でもないような気もする。

 たとえばある人が放射性物質を所有しているが、それを利用するにあたって常に専門家の助力が必要だとする。そうすると、物を利用するために常に人の行為が必要となり、債権と似てくる。

 一方で、賃借権は賃借物の占有に賃貸人の同意が必要とされるが、この同意は観念的で包括的なもので、行為性が弱い。賃借人は事実上賃貸人の行為をほとんど介せずに賃借物を利用する。これは物権に似てくる。

 物の支配の実現のために人の行為が必然的に伴う場合、あるいは、人の行為の実現のために物の支配が必然的に伴う場合、物権と債権は相対化されてくると思う。