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随伴性

 債権譲渡がなされたとき、その債務を保証する債務もその債権に付属して移転する。これが随伴性の問題である。では、物が譲渡された場合、使用収益処分権が移転するのは随伴性の問題だろうか。しかし、所有権の内容自体が使用収益処分権なのであり、所有権が移転されている以上、譲受人が使用収益処分できるのは、譲渡本来の効果であり、随伴性の問題は生じない。

 では物権的請求権はどうだろう。物権的請求権も所有権本来の効果として、随伴性は問題とならないのだろうか。だが、所有権本来の効果はあくまで使用収益処分権であり、物権的請求権は所有権を前提としてそこから派生した権利のようにも思えなくもない。だとすると、所有権から派生した権利が、所有権の移転とともに移転するというのは、随伴性の問題に似てこないか。

 だが、やはりこれは随伴性の問題ではない。随伴性の問題とは、ある権利から自然的には発生しない権利がその権利に付属させられたときの問題である。債権から当然に保証債務が発生するのではない。保証債務は意図的に人為的に付属させられるのである。債権から当然に保証債務が発生しないからこそ、債権譲渡が行われたときに、保証債務が存続するかどうか問題となり、それを例外的に存続させているのが随伴性の議論である。

 物権的請求権は所有権から自然的に当然に発生する。だから、物が譲渡されたとき、物権的請求権まで一緒に譲渡されているのではない。新たな所有者の新たな所有権の下で、物権的請求権は新たに自然的に発生するのである。ここでは、物権的請求権は承継されているわけでもなんでもないし、また物権的請求権は自然に発生するので、例外的な承継を論じる必要性がない。