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法定追認

 125条は不思議な規定だ。履行などの事実行為がなされたとき、それが追認(意思表示)とみなされるのである。つまり、事実行為を法律行為とみなす規定だ。あるいは、事実行為が黙示の意思表示とみなされているのである。

 詐欺と知りながら、債務を履行する。だが、この場合債務者は追認をしていないのだから、論理的には依然法律行為は取り消しうるままのはずである。だが、法律行為によって生じた債務を履行しながら、法律行為自体は一定の期間内なら取り消すことができるとするのは背理であろう。債務の履行は、法律行為の確定的有効を前提としていると思われるし、法律行為が取り消せるのだからそれに基づく履行も取り消せるとなれば相手方の地位を著しく不安定にする。

 ある行為A(履行等)が別の行為B(追認)を論理的前提とする場合、たとえBが明示されなくてもAさえ実行されればBの実行を擬制する。つまり、Aが実行された場合、法的には、AB両方が実行されたとみなすのである。