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比較

 会社法の諸制度を、似た制度と比較してみると面白い。

 例えば、定款の絶対的記載事項と、人間の戸籍記載事項。27条を見てみよう。定款には、会社の目的、名前、所在地、財産、代表者を書かなければならない(あえて不正確に書いた)。だが、ある人の戸籍にその人の目的が記載されていることはありえない。会社には必ず目的がなければならないが、人間には目的は不要である。これは、会社が一定の社会的役割を果たすために例外的に法人格を認められていること、人間に目的を付することは個人の尊厳を害すること、など、様々な「会社と人間の違い」によって説明されるだろう。

 例えば、定款は、会社成立後は本店と支店に備え置かなければならない(31条1項)が、これと法律を比べてみる。法律に拘束されるのは全国民であり、それゆえ法律には公布(憲7条1号)が必要である。だが、定款に拘束されるのは役員や社員であり、彼らに周知するには備え置きで足りる。