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 代理とは結局何をやっているのだろうか。たとえば売買契約を代理人が代理する場合、本来なら本人がするはずの意思表示を、本人の命ずるがままに、かわりに行うのである。契約書にサインする場合、通常なら本人は自分の手を使う。自分の手を使う代わりに代理人の手を使うのが代理制度であろう。

 だが、委任の内容というものには様々な抽象度がある。甲建物の売却、という具体的なものから、甲建物の適切な価格での売却という少し抽象的なもの、さらには、とにかく何をしてもいいから金を作ってきてくれ、というだいぶ抽象的なものまである。

 国会議員に任せられる事務の内容というものは、抽象度の高いものである。甲建物の売却、みたいにがちがちに具体的で裁量の余地がないものとは違う。一応公約はあっても、議員はそれに縛られないのだから、国民は議員に対して、およそ良い法律を作ってくれ、くらいの委任しかできていないのではないか。

 委任の内容が具体的であれば、代理人は余計なことをしないのだから、まかせるのは簡単である。だが、委任の内容が抽象的になればなるほど、代理人の裁量の余地は広くなり、それゆえ代理人の人格を広く考察して選ばなければならない。議員の選挙が容易でないのは、議員に裁量の余地が広いから、誰を議員にしたら良いか判断するに当たって考慮すべき要素が多いからであろう。

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