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作為と不作為

 作為犯と不作為犯にそんなに大きな違いがあるのだろうか。作為犯と不作為犯の区別は、実行行為は原則的に「外形的に」存在しなければならないというドグマに基づいていると思うが、外形的であるかどうかは、犯罪論にとって本質的な問題ではないのではないだろうか。「犯罪者の何らかの態度があって、それによって法益侵害の結果が導かれる」という点のみに実行行為の既遂の本質を読み取るならば、犯罪者の態度が外形的に結果に向けられているか何もしないでいるかは本質的ではないと思われる。

 この見解については、作為犯と不作為犯ではその成立要件が異なるのだから、本質的な違いがある、との批判が寄せられるかもしれない。不作為犯には保障人的地位という構成要件要素が必要であるという意味で作為犯と本質的に異なるのだ、と。だが、保障人的地位というものは、結局結果に至る因果経過にどれだけ寄与しているかという問題に過ぎないのであって、結局構成要件要素としての因果関係の問題に吸収されるのではないだろうか。つまり、保障人的地位にあることが、結果に至る因果関係に対する寄与の大きさを示しているに過ぎないのではないか。