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社会科学読書ブログ

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窃盗罪は危険犯?

刑法学

 択一を解いていると、窃盗罪がどの段階で既遂になるかの判断が求められる。だが、占有が移転したという法益侵害の発生は、例えば人が死んだという法益侵害の発生ほど客観的に判断できるものではない。裁判例によると、留守中に財物を運び出す準備をした時点で窃盗の既遂になる。これは留守中は家人の占有支配が弱いからとされる。一方で、択一の肢によると、警備員のいる倉庫でテレビ十台を一箇所にまとめた時点では既遂にならない。これは、警備員がいることによる占有支配の強化と、テレビという財物の搬出困難性による。

 とすると、窃盗罪の保護法益は、実は完全な占有であって、完全な占有の取得の具体的危険が発生した時点で既遂とされているのではないかというアイディアも湧いてくる。つまり、窃盗罪は具体的危険犯なのではないかというアイディアである。危険が発生したかどうかの判断基底として、占有者の支配の強度や財物の搬出容易性が考慮されているのではないか。占有支配が弱い場所で搬出容易なものを盗もうという場合は、運び出す準備だけで完全な占有取得という結果発生への具体的危険が発生していて、危険犯としての窃盗罪が既遂となる。一方で、占有支配が強い場所で搬出困難なものを盗もうという場合は、その場所から運び出さなければ具体的危険が発生せず、既遂とならない。

 財物を運び出す準備をしただけで窃盗罪が既遂になるとするのは、既遂の時期が早すぎるような気がするのである。既遂の時期の早さを説明するための理論的構成として、危険犯としての構成を示唆してみた。それに、侵害犯の既遂が規範的に判断されることに対する違和感もある。規範的判断は危険判断にむしろなじむのではないか。この点どうなんでしょう。とんでもない異説を唱えている気がする。

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