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会社の行為の内容

 例えば会社が募集株式を発行する場合、199条1項各号に掲げられた事項(募集株式の数など)、すなわち募集株式発行の内容を会社は定めなければならない。だが、内容の定まらない募集株式の発行などそもそも不可能ではないか。なぜ、会社法はいちいち会社の行為の内容を決定することを会社に義務付けているのか。行為するためには内容を定めなければならないのは当然で、特に義務付けることをしないでも会社は内容を決定するはずである。

 だが、おそらく、行為の内容の決定自体を義務付けることに眼目があるのではなく、それを特定の機関の決議に拠らせることを義務付けることに会社法の眼目はある。募集株式の発行だったら、199条の1項よりもむしろ2項のほうが大事である。それは、2項が、発行の内容の決定を株主総会にさせることを義務付けているからだ。会社の行為の内容の決定を、特定の機関の意思決定に委ね、そこで議論を尽くさせることに会社法の眼目はあるのであって、内容を決定すること自体をわざわざ義務付けているようには思えない。内容を決定するのは当たり前のことで、わざわざ義務付けるまでもないのではないか。