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S先生

 大学院時代、院長をつとめていたS先生という方がいて、なぜか私はその先生が好きだった。この先生は、いつも高度な思考をしているせいか、講義でもついつい基本から離れて高度な話を始めてしまい、そのせいで学生たちからは評判が良くなかった。教育者というよりは学者であり、教育者としての現実に適応することに成功していなかったように思えた。

 彼は敬虔なクリスチャンであり、手に障害を抱えていた。風貌は決して端整ではなかったが、親しみが持てた。基本的に他人を愛する人だったのだと思う。だからその人柄が僕は好きだったのかもしれない。また、周りの人間が彼のことを批判するから、それに対する反作用だったのかもしれない。ただ、彼は、嫌うものは嫌う、ダメなものはダメ、という厳しさも持っていて、どこか厭世的な雰囲気も感じられることがあった。

 いずれにせよ、大学院時代、私はその先生が一番好きだった。