社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

馬場靖雄『ルーマンの社会理論』

ルーマンの社会理論

ルーマンの社会理論


 ルーマンはシステムと環境の区別から出発する。システムとは特定の区別(コード)に即して組織化されたコミュニケーションの総体である。法システムだったら、<合法/不法>というコードを通して接続されたコミュニケーションの総体である。そしてシステムは、その構成要素の回帰的ネットワークの中で新たに要素を再生産するオートポイエティックなものである。

 例えば法システムと政治システムは、それぞれオートポイエティックで閉鎖されたシステムである。だが、政治システムは<役職と権限の所持/不所持>というコードによって、法システムの<合法/不法>というコードを棄却する。その棄却によって、閉ざされた法システムに偶然的な規定要因が持ち込まれ、自己同一的で無規定的な法システムが規定される。同様に政治システムも法システムによって規定され、そこには相互寄食的な関係がある。

 ルーマンは「根底」や「神秘」というものを認めない。回帰的で表面的なコミュニケーションの接続が与件的に存在するのみである。だからシステム同士に階層関係はない。私は社会学に詳しくないので、ルーマンの理論の体系的な意義とかはさっぱり分からない。だが、法システムというものが決して特権的だったり根源的だったりするものではなく、むしろ他のシステムによって規定されることで初めて存立しうるものであることが分かった。法システムの相対性と他者依存性が分かっただけでも収穫である。