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債権譲渡する債務

 将来債権も現在の時点で譲渡可能だとされる。だが、存在しないものを譲渡するというのはそもそも不可能ではないか。だから、将来債権の現在譲渡の実質は、債権の発生を停止条件とする債権譲渡契約なのではないだろうか。そうすれば、存在しないものの譲渡という理論的困難性を回避できる。

 だとすると、将来債権の譲渡契約が成立すると、譲渡人は譲受人に対して、「債権が発生したらあなたにその債権を譲渡する」という債務を負うと考えられる。将来債権の譲渡の時点での債務者への通知が権利行使用件として有効であるのは、この債務によって債権譲渡の確実性が担保されるからだと思う。

 そう考えると、現在債権の譲渡前にされた通知であっても、有効であるとする余地が出てくる。現在債権の譲渡前の通知は、債務者を不安定な地位に置くから無効だとされている。だが、譲渡人と譲受人の間で、「○月○日に譲渡人は譲受人に債権を譲渡する」という債権債務関係が成立していれば、債権譲渡されることの確実性が担保されるのだから、譲渡前の通知でも有効となりうるのではないか。ただし、通知には債権譲渡のなされる日付が記載されねばならないだろう。