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社会科学読書ブログ

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職務の適法性

刑法学

 公務執行妨害罪においては、職務の適法性が「書かれざる構成要件」として要求されるとされている。だが、職務の適法性は構成要件要素というよりは違法要素なのではないだろうか。

 傷害罪は、被害者の同意がある時、違法性が阻却される。これは、同意によって、被害者の保護法益の要保護性がなくなるからである。同様に、公務執行妨害罪においては、職務が違法であることにより、公務の遂行という保護法益の要保護性がなくなる。傷害罪における同意による違法性阻却と、公務執行妨害罪における職務の違法性による違法性阻却は、保護法益の要保護性がなくなる、という同じ構造を有しているのである。傷害罪で同意が違法性の問題とされている以上、同様に公務執行妨害罪でも職務の違法性は違法性の問題とされるべきなのではないか。

 構成要件は、類型的に違法な行為を形式的に判断するために定められている。構成要件に該当すれば原則違法なのであり、違法性阻却事由がある場合に例外として適法となるにすぎない。構成要件は、抽象的・原則的な違法類型であり、違法性は、具体的・例外的に考慮されるのである。職務の適法性を構成要件要素だとみなすということは、職務の適法性については抽象的に判断し、職務が適法で犯罪者の行為が他の構成要件を満たせば原則違法だと判断するということだ。

 ところが、職務の適法性は、抽象的職務権限・具体的職務権限・手続方式の履践といった観点からかなり具体的に判断されている。また、職務が違法であることは、事実上例外的な事態であり、職務の適法違法という判断は、原則のレベルではなく例外のレベルで判断するのが犯罪の実態に合っている。それゆえ、職務の適法性は違法性のレベルの問題だと思われ、それが構成要件要素となっていることには納得がいかない。

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