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善悪の決め方

 ある行為が善か悪か決める場合、その行為がどの観点からみても善であれば問題がないが、ある意味善だがある意味悪だ、という場合に、行為自体が善か悪か決めるのは難しい。その場合どのようにして行為の善悪を決めるか。

(1)善悪を計量化するやり方。たとえば殺人を請け負ったが殺人義務を履行しなかったという場合、殺人をしなかったという善が+60で、義務の不履行という悪が−20だから、全体として+40の善だ、と判断するのである。この立場は、あらゆる善悪を一つの尺度で定量的に計れるということを前提としているが、その前提は極めて怪しい。

(2)善か悪か、を二進数的に決めるやり方。殺人義務の不履行は、人を殺さないことの善の方が義務不履行の悪よりも上回るから、善だ、と判断する。善悪は計量化されないが、どの善がどの悪に優先するかという順序はある。最終的に善か悪かのいずれかに決まる。

(3)ある意味善だが、ある意味悪だ、と考える方法。人を殺さないことと、義務の不履行は、異質なものであり、比較不可能だと考える。人を殺さなかったという意味では善だが、義務を履行しなかったという意味では悪であると考え、行為自体の善悪判断は保留するのである。