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牽連性

 双務契約について、成立上の牽連性、履行上の牽連性、存続上の牽連性があるとされる。これは、等しい経済的能力を持つ者たちが、等しい負担をする場合には、等しく扱いましょう、という考えだと思われる。つまり、同じ人たちは同じく扱おうという法の適用の対称性・平等性の原則が根本にある。

 だが、現実には、一方当事者が事業者で相手方が消費者であるという具合に、当事者の経済的能力が異なることもある。また、契約によって負担する内容が不平等なこともある。その場合、牽連性の原則を適用する前提となっている、当事者の対称性・同等性が成立していないのではないか。にもかかわらず、消費者契約法は特に同時履行の抗弁権を否定していないし(←たぶん。信義則で履行の内容を調整しているらしい)、負担付贈与においても同時履行の抗弁権が認められている(553・533)。

 当事者の経済能力の差異を考慮外にするのは、民法の基本にあるフィクションだから仕方がない。だが、そもそも内容において不平等な双務契約、例えば時価100万円相当の土地を10万円で売る場合、において、そのまま同時履行の抗弁権を認めてもよいのだろうか。牽連性の原則は、その適用の前提を欠かないだろうか。