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形式と実質

 法律学のコンテクストでは、よく形式論と実質論が峻別されている。だがこの形式と実質の違いとは一体どんなものなのか。

 たとえば、特定の論点に対する学説について、「形式的根拠―実質的根拠」という対立がある。また、証拠力について、「形式的証拠力―実質的証拠力」という対立がある。また、法律の概念について、「形式的意味での法律―実質的意味での法律」という対立がある。

 思うに、形式と実質の区別は、手続的正義と実体的正義の区別に対応する。手続的正義とは、公認された手続きを経て得られた結論は、その内容が何であれ正しいとみなす正義観である。実体的正義とは、問題となっている結論が、内容として正義を実現しているときに正しいとみなす正義観である。

 そして、手続的正義と実体的正義は、問題となっている内容が、その根拠と論理的関係に立つかどうか、の点において異なると思われる。

 国会の審議で「人を殺したら死刑」という法律ができたとき、「国会で結論が出された」ことと「人を殺したら死刑」は論理的な関係に立たない。「国会で結論が出された」ことは、「人を殺したら死刑」の通用力を基礎づけるにすぎず、情報のレベルで論理的な基礎になっているわけではない。「国会で結論が出された」ことと「人を殺したら死刑」は、情報面において何の関係もない。これが手続的正義の次元の話である。

 それに対して、「同害報復の原理」から「人を殺したら死刑」は、情報のレベルにおいて論理的に導き出せる。人を殺した以上、それと同じ報復を受けるべきなのだから、その人は死刑になるべきだ、ということが論理的に導き出せるのである。これが実体的正義の次元の話である。

 形式的根拠は、「条文にそう書かれている」ということを根拠に、条文が通用力を有していることを通じて、説を基礎づける。それに対して実質的根拠は、基本的な正義の原則をもとに、情報の次元で論理的にその説を基礎づけていく。形式と実質は手続的正義と実体的正義の区別に対応する。そして、その区別は、結論が公認された手続により妥当性を付与されているだけか、それとも情報のレベルで根拠と結論が論理的に結び付くか、によってなされると思われる。

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