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自己言及性

 法がその法自体について自ら規定することがある。たとえば憲法98条1項の最高法規性。法の自己言及の在り方は、(1)法が自らの効力を規定する場合、(2)法が自らの適用範囲を規定する場合、(3)法が自らの目的を規定する場合、があると思う。

 (3)は問題がない。法の目的はその法の内部的なあり方を定めるにすぎないからだ。問題は(1)と(2)である。

(1)たとえば法律の附則には施行日が定められていたりするが、その施行日に達したとしても、その法律がまだ効力を有しない以上、施行日の規定も効力を有さず、結局永遠に発効しないままということも論理的には考えうる。憲法の最高法規性にせよ、まだ憲法が効力を有さない段階では、最高法規性も効力を有さないから、憲法の効力は基礎づけられない。つまり、憲法の効力を始動するためには憲法外部からの効力付与が必要になるのだ。

(2)また、刑法3条の2のような消極的属人主義を、いくら刑法が勝手に定めたところで、外国との外交的努力がなければ外国における日本国民に対する犯罪を処罰できない。

 つまり、(1)(2)のような自己言及性は、その法の効力や適用範囲を自己完結的に規定しているようで、実は外部的な要因が作用しないと成立しないという意味で未完結なのである。