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下積み

 私は下積みが長い。下積みが長いと弊害がある。

 まず、自己評価が低くなること。目に見える達成もなく、社会的評価も得られないのだから、自己評価を高く維持するのは困難である。実際私は、自分に人間的な魅力など全くないと思っているし、才能もろくにないと思っている。才能のなさを必死に糊塗するために、こんな文章を書いたりもするのだろう。魅力や才能を確証する証拠がないのである。

 次に、権威を軽視するようになること。自分が社会的権威に認められないとなると、そんな自分の価値を維持するためには、権威の価値を低めればよい。どうせ権威なんて大したことないのだから、それに認められなくてもどうってことはない。そういう自己防衛をするようになってしまうのだ。

 さらに、幸福追求をあきらめてしまうこと。幸福が得られないことに慣れると、そもそも幸福など追求しなくてもいいのではないかという、悪い意味でのコペルニクス的転換が起こってしまう。そうすると、せっかく手に入る幸福までみすみす見逃してしまうことになりかねない。

 ああ、だが、この下積みの、どうしようもない無価値性、ゼロであること、そこにストイシズムの魅力を感じてしまうのである。私は下積みに向いているのかもしれない。