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人権の公益的側面

 憲法前文には、国民主権・平和主義・国際協調主義が掲げられているが、不思議なことに個人の尊厳の原理が書かれていない。だが一般に、人権は究極的には13条の「個人として」の「最大の尊重」原理に基づくとされている。だが、人権の尊重の根拠は、主観的な個人の尊厳だけではなく、むしろ超主観的な公益であることも多いと考える。

 例えば15条の公務員の選定罷免権は、国民の自分たちのことは自分で決めるという権利を擁護するためというよりも、むしろ国家の正常な作動、つまり国民の監視のもとに公正さを担保された国家運営、という公益を担保するために定められているともいえる。

 また、26条1項の学習権についても、国民の自己の人格を発展させる権利を擁護するためというよりも、将来民主主義社会を正常に作動させるだけの批判力のある人間を育成することで国家の安泰な繁栄を目指す、という公益を担保するために定められているともいえる。

 人権は、エゴイズムのみによって主張されているのではなく、むしろ公益を実現するためにその保障が必要なのである。