読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

人間の解除できない同一性

法哲学

 会社は合併することも分割することもできる。つまり、二つの法人格が一つになったり、一つの法人格が二つになったりする。これがなぜ可能かというと、会社は、その同一性を一時的に解除することが可能だからだ。

 AとBが新設合併をすることを考えると、会社法2条28号より、AとBはいったん消滅する。「Aである」という同一性が解除され、Aでなくてもよくなる。Bについても同様。そのあと、新設会社Cが、AとBの権利義務を承継する。ここでは、AはAであり続ける必要がないのである。Aとして独立している必要はないのである。「Aである」という同一性を解除して、Bと合わさり、新たに「Cである」という同一性を獲得する。

 分割の場合はもっと分かりやすい。Aが新設するBに権利義務の一部を承継させる場合、AがAとBに分かれるわけである。つまり、Aは「Aである」という同一性を解除し、「AでありBである」という二つの同一性が生まれる。

 ところで、同じ法人格でも、人間は合併も分割もできない。Aという人間はその同一性を解除できない。これは、肉体の不可分性による。会社は資本や財産や株主が可分だから、同一性を解除できるが、人間の肉体は不可分であり、同一性を解除できないのだ。