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権利に対する所有権

 金銭債権が証券化でき、債権の移転や行使には証券が必要だとなってくると、結局、証券の所持者は、証券を所有することによって金銭債権を所有しているのではないかと思えてくる。つまり、債権に対する所有権のようなものがあるのではないか。

 債権者とは債権の所有人であり、それゆえ債権を使用収益処分できる。債権者は債権を行使できるし、譲渡もできる。だが、このように所有権の対象とできない権利もある。例えば著作権は譲渡できるが(著作権法61条1項)、著作者人格権は譲渡できない(同法59条)。著作物を利用する権利を所有することはできても、公表権などを所有することはできない。人格権は、権利者が処分できないので、それに対する所有権を観念することが難しい。所有権の対象というものは、所有者と分離可能であり、所有者が支配可能であるものだ。所有者から分離できず、所有者に自由な支配を許すと所有者の尊厳を害するような権利にたいして、所有権を観念することはできない。

 所有権に対する所有権というものも観念できるが、これは無限に所有権が増えていくことになるだけで意味がない。要するに、権利の中には物と同様に扱えるものもあれば、物とは同様に扱えないものもあるということだ。