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特殊的人権と一般的人権

 なぜ表現の自由についてだけ、そのプライバシー権的側面が抽出され、わざわざ憲法に通信の秘密として保障されているのか、疑問である。思想良心の自由にしろ、内心を推知されない自由が当然そこから導かれるとされている。あらゆる人権の行使には何かしらの私秘性が伴う場合があり、それらについてはいずれもプライバシーの保障が問題となる。結社の自由にしろ、どんな結社に入っているか知られない自由があるだろうし、生存権にしろ、生活保護を受けていることを知られない自由があるだろう。

 このように、人権には、表現の自由、職業選択の自由など、個別的に質の違う並列された人権がある一方、プライバシー権、平等権のように、すべての人権の行使に付随して保障される人権がある。特殊的な人権と一般的な人権があるのである。人間の諸活動に応じて、それを保障するために特殊的な人権が設定され、一方で、およそ人間の活動について保障されるべき原理というものがあり、それは一般的な人権として設定されるのである。