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法律上保護された利益と保護法益

 取消訴訟の原告適格は、行訴法9条によって、当該処分・裁決を取り消すにつき「法律上の利益」があるかどうかによって判断される。ところで、これは刑法で言う保護法益論と同じことを言っているのではないか。つまり、国家が保護する利益というものは、あらかじめ法律によって「それを保護するよ」と規定された利益に限定されていて、それ以外の利益の侵害については国家は不当にあるいは無用に介入しないのではないか。

 刑法の諸規定にはそれぞれ保護法益があり、逆に言えば、刑法によって保護されていない利益が害されても国家は刑罰権を発動しないのである。刑法という法律が保護しているから、その利益は国家によって保護されるのであって、逆に言えば刑法が保護していない利益は国家も保護しない。同じように、行政法の領域の個別法も、その個別法が保護していれば、その利益は国家によって保護されるのだが、個別法が保護していない利益は、国家も保護しないのである。