社会科学読書ブログ

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 『人間交差点』に次のような話がある。主人公は大企業に就職する。だが、上司のひき逃げの罪を着せられて、友人に偽証をされて、服役する。服役後、彼はタクシーの運転手を始める。あるとき、ひどくあわてたような客をタクシーに乗せた。それは彼に罪を着せたかつての上司だった。かつての上司はある女を殺したのだった。上司が取り調べられている合間に、主人公は、参考人として、自分は上司をタクシーに乗せなかったと証言する。上司のアリバイを証明したのだ。かつて主人公を裏切って出世した友人は、主人公が上司のアリバイを覆したと思って、主人公に詰め寄る。だが主人公は、自分はそのような証言をしなかった、と答える。なぜだ、憎くないのか、と問いかけるかつての友人に対して、主人公は、「どうでもいいんだよ」と答える。今の生活に満足しているし、それなりに楽しいから、昔のことなんてどうでもいいのだ、と。

 俺も今はそんな気持ちだな。かつてひどく世の中を憎んだことがあったけれど、今はどうでもよくなった。それなりに満足してるし、出世争いとか売名争いとかどうでもいいと思っている。自分のペースで生きていれればそれでいい。