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中山元『フーコー入門』(ちくま新書)

フーコー入門 (ちくま新書)

フーコー入門 (ちくま新書)

 フーコーは、現在我々の立っている視点、我々にとっての真理、それが決して自明なものではなく、歴史的に形成されたものだということを示す。彼はニーチェにならってそれを系譜学と名付ける。彼は、具体的に、狂気というものがいかに歴史的に形成されたかを暴く。

 そして、生物学・経済学などの知は、知の枠組み(エピステーメー)によって規律されているが、それは時代とともに、生命・労働・言語・人間などの概念の発生によって変化していった。

 真理というものは、様々な力の競合と対立によって成立する<暴力の帰結>であり、例えば階級対立において、支配階級の価値体系が真理になったりする。だが、その真理を決定していく権力は、外部から人間に働きかけるのではなく、むしろ主体の内部から発されるものである。

 ところが、学校や試験という制度は、主体の内部にまで侵入し、主体の内部にまで規範を設定することで、権力に対して従順な身体というものを形成した。権力はもはや主体を外部から規律するだけでなく、内部においても主体を支配するのである。

 そして、主体の内部を支配するにおいて、権力は司牧者の姿をとる。司牧者が、告白をする個人の心の安らぎを与えると同時に、その個人の性などのプライバシーを支配するように、国家は警察や福祉など、国民の幸福を目指すような面持ちを取りながら、国民の隅々までをも支配する。

 そのような権力に服従しないためにも、個人は自己の欲望を解き放ち、真理をめぐるゲームに参画することで、自らの真理を主張し、社会を変えていくのである。