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H.G.ウェルズ『世界史概観』上(岩波新書)

世界史概観(上) (岩波新書)

世界史概観(上) (岩波新書)

 世界史を、地球の始まり、生命の始まり、人類の始まりから説き起こし、この上巻では十字軍までを取り扱っている。記述のスタイルは、基本的に年代順であり、地域を横断したり、時代が大きく変わったりするごとに新しい項目が立てられる。だが、この項目の立て方に、著者の歴史意識が端的に表れていると思う。つまり、当時の人たちや現在の人たちにとって大きな影響を与えた出来事を挙げるのである。何を項目として建てるかによって、著者が何を重視していたかわかるし、その項目によっていくつかの出来事を包括できると考えていたことが分かる。そして読者は、著者によって区切られ、重点づけられた歴史を受容するのである。

 ヨーロッパの歴史が、絶えざる人種間の争いで流動的であったこと、ローマの発展と衰退の原因、キリスト教が人間の内面まで支配し始めたことによる後代への影響など、学ぶことはたくさんあった。下巻も楽しみである。