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西尾勝『行政学』(有斐閣)

行政学

行政学

 行政はそもそも、国防・警察・司法という小さな役割しか与えられていなかったが、それだけでは国民の幸福を最大限実現することができないため、福祉の領域にまでその活動を広げていった。社会の利益を増大させるため、市場の失敗が生じる領域に行政は入り込んでいった。

 本書は、そのような行政についての分析をした本であるが、行政がその目的を達成するために作り上げた官僚制についての記述を主軸にし、官僚制の功罪、官僚と政治・国民との相互作用、官僚制内部での意思伝達プロセス、官僚制の効率性などについて論じている。社会全体の利益の増進→適切な行政組織の形成→官僚制の形成、といった流れである。

 この本を読んで思うのは、国家やら企業やらが現実に活動するためには、必ず組織と作用の両面が必要だということだ。組織がなければ作用はあり得ないし、作用のない組織は存在意義がない。組織と作用が不即不離になって、作用は反作用とうまく折り合えをつけ、組織はその内部における情報伝達を効率的に行い、行政サービスは可能になっているのである。