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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

川北稔編『ウォーラーステイン』(講談社選書メチエ)

知の教科書 ウォーラーステイン (講談社選書メチエ)

知の教科書 ウォーラーステイン (講談社選書メチエ)

 本書は、ウォーラーステインの世界システム論の要点をまとめると同時に、世界システム論の応用、著作解説を付したものである。

 世界システム論とは、以下の様な視点である。(1)世界の不平等は個々の国家の内在的な理由によるものではなく世界経済全体の中での個々の国家の位置づけによって決まる。(2)世界経済は資本主義的な分業体制によって結び付けられている。(3)資本主義的世界システムは15-17世紀に北西ヨーロッパに成立し19世紀には世界全体を覆うようになった。(4)近代世界システムは不平等を拡大するものであり絶えず周縁を取り込まなければならない。(5)不平等の拡大には限界があるため近代世界システムはどこかで根本的に異なるシステムに変らざるを得ない。(6)新しいシステムを作り出すためには旧来の社会科学を見直し新しい知のシステムを作る必要がある。

 世界システム論は、政治を世界全体のレベルから捉え直す全体論的な視点であり、歴史や経済など社会科学的な問題をより全体的に見直すべきとする画期的な議論である。主に経済的な相互依存を問題にしているようだが、世界システム的な見方は、世界観や価値観といった文化における相互依存も問題にできるであろう。もちろん、法や学問など、およそ人間の活動のあらゆるものは世界全体との相互作用で影響を受けている。資本主義は単なる経済の問題ではなく、文化や思想の問題でもあるだろう。また、世界システムがどのように転換するか、その際に必要となる知の枠組みはいかなるものか、そのように未来へと投げかけられた議論であることにも魅力がある。