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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

貝塚茂樹『諸子百家』(岩波新書)

社会哲学

 

諸子百家――中国古代の思想家たち (岩波新書)

諸子百家――中国古代の思想家たち (岩波新書)

 

  中国古代の戦国時代は、たくさんの国々が割拠し互いにしのぎを削っていたので、それら諸国家は国家の生き残りに役立つような思想を求めていた。古い貴族階級が没落し、平民たちが力を得る中、魏の文侯は広く市民社会から有能な人材との交友を図り、それが諸子百家の多様で自由な思想の基礎となった。さらに、斉の宣王は稷門付近に文化区域を設定し、広く天下から学者・思想家を招へいし自由な議論を戦わせた。これが百家争鳴の議論を生んだのである。

 孔子の仁と礼を重んじる思想、墨子の平和と平等を重んじる思想、老子の道の思想や隠遁思想、荘子の立身出世を白眼視して雄大な精神性を重んじる思想、孟子による孔子思想の深化と性善説荀子による諸学派の体系化と性悪説韓非子による法の思想など、諸子百家の思想の射程は人間の実存から社会哲学、正義論まで幅広く及んでいる。

 本書は各思想家の思想の内実を知るには不十分である。それよりも、諸子百家の成立した歴史的背景の方が重要である。国が乱れるとき、実力こそが要求され、その実力を手に入れるために思想が重視される。安定した時代ではなく、不安定な時代だからこそ思想が重要性を増すのである。