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社会科学読書ブログ

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佐々木毅『政治の精神』(岩波新書)

政治学

 

政治の精神 (岩波新書)

政治の精神 (岩波新書)

 

  多様な意見をまとめあげて実行する政治的統合においては、その統合が民衆に開かれていなければならない。イデオロギー的君主による独裁的統合は、20世紀に巨大な恐怖を生み出した。政治的統合は何かを実行するには不可欠であるが、それが権力性をまとうことによって暴走することを阻止しなければならない。

 政治家は権力を追求し他者と競争する主体であるが、そのためには集団を形成するのが理にかなっている。政党は権力維持のコストを賄うと同時に影響力を行使することができる。政治家は公的なことにコミットする人間であると同時にどっしりとした矜持を備えているのが望ましい。だが、政治家が権力を自己目的とするとき権力は腐敗する。政治家は情熱・責任感・判断力を兼ね備えていることが要求される。

 政治的な選択とはベストの判断ではなくベターの判断、悪さ加減の判断である。デモクラシーにおいて大衆は自らを積極的に政治的に教育していく必要がある。政治参加とは多数者の自治ではなく主体の多元性・選択の自由と結びつけられなければならない。平等主義は個人主義を生み出したが、そこでは誰もが独立して弱体化し、個人の殻の中に閉じこもってしまいがちである。市民は互いに協力して公共の事業に取り組んでいく政治的自由を重視するのが望ましい。

 本書は政治学の知見を縦横無尽に用い、政治的統合・政治家と権力・大衆の意識といったくくりで政治学を再編成し、そののちに時局の政治状態を評価している。時事的な評価にそれまでの理論的な記述が十分に生かせているとは言い難いが、おそらく本書のもくろみは、時事的な問題を考えるにあたっての理論的な知識を体系的に祖述することだと思われるので、現在の問題について考えるのは我々読者に投げかけられている。様々な含意に富み読み応えのある本である。