福井県知事が地方自治の現場から、地方の現状と未来について、地方を活性化していく態度で説得的に語っている本。
地方の財源は確かに都市の税収によって賄われている部分も多いが、逆に地方が都市を支えている局面もたくさんある。水や電気は地方によって支えられているし、人材も地方から都会に流れている。出生率が高いのも地方である。
戦後の国土計画は、経済合理主義に基づく集中投資と地域間格差を是正する政治的配慮のバランスを取ろうと苦慮してきたが、バブル崩壊後の立て直しにおいて大都市への集中が優勢になった。これからの国土政策は、経済合理性だけではなく、自然環境・伝統産業・農業・文化にも重点を置いて考えられるべきである。
小泉内閣の「構造改革」は地方の自立性を高め地方の無駄をなくすという名目のもとに、「官から民へ」という政策を掲げて短期的な利益を追求するような体質を作ってしまったし、地方産業を衰退させ人材を地方から流出させてしまった。
人々が集団から「個」に向かう中で、つながりが希薄化しているが、そのようなつながりをとりもどす場は「ふるさと」にほかならない。新しいふるさとにおいては自由な主体が積極的につながりを作っていくのである。それは外からの視点と内からの視点の両方を持ち、外から内へと良いものを積極的に取り入れ、また内から外へと接点を求めていくものである。
本書は、豊富な具体例をもとにしたふるさと活性化論であり、新しい人間の在り方、新しいつながりや共同体の在り方を生み出すものとしてふるさとを肯定的にとらえている。著者は「ふるさと納税」の提唱者であり、地方への深い愛情が随所から伝わってくるし、それを単なる愛情で終わらせず様々な理論と実践でふるさとを現に活性化させている。ぜひとも多くの人に読んでもらいたい本である。