社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

明石康『国際連合』(岩波新書)

 

国際連合―軌跡と展望 (岩波新書)

国際連合―軌跡と展望 (岩波新書)

 

  国連の課題や機能・歴史についてコンパクトにまとまっている本。多少物足りなくはあるが、入門書としてよいのではないか。

 国連はグローバル・イッシューを扱うグローバル・ガバナンスの機能を果たす。大きく分けると(1)国際平和と安全、(2)途上国の開発、(3)人権をめぐる問題、を取り扱う。

 国連の系譜は三つある。(1)ウィーン会議におけるヨーロッパ協調、(2)戦争と平和について多数国が話し合ったハーグ会議、(3)19世紀中ごろに始まった、食料・農業、文化・教育・科学、保健衛生、労働問題などについての国境を越えた協力。さらに国連に先立つものとして国際連盟があったが、国連は連盟よりも広範囲の問題を扱い、多数決原則を取り、安保理の強制行動に拘束力がある。加盟国も圧倒的に多い。

 国連が大きな役割を果したのは主にPKO活動である。また、国連は一国一票主義を取っているため、中小国のニーズを大幅に取り入れる役割を果している。また、国連に特徴的なのが事務総長というポストであり、中小国の代表が国連の大きなポストを占めることで、柔軟な運営がなされてきた。

 本書はとりあえず国連について知りたい人は読んでおくといいと思う。難しい所は一切ないし、意外と知られていないことについてもしっかり書かれているし、国連を中心とした国際関係史としても読める。個人的には、歴代事務総長について紹介してある部分がとても面白かった。特殊な政治家としての活躍ぶりに興味を抱いた。