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本田和子『異文化としての子ども』(ちくま学芸文庫)

 

異文化としての子ども (ちくま学芸文庫)

異文化としての子ども (ちくま学芸文庫)

 

  山口昌男の「中心ー周縁」論を、だいたいそのまま「大人ー子ども」の対立に応用している。議論の骨格としてはそうだが、この評論の読むべき点は、その具体的で官能に満ちた華麗な筆さばきと、それこそ周縁的で少女的な装飾的で詳細な記述であろう。

 子どもは大人の意味の範疇から外れていく、大人にとっての他者である。子どもは大人の世界の周縁に属し、野性や聖性、非理性、非日常性、撹乱性、侵犯性、非連続性、断片性、現在性、祝祭性、不定形性、自然性、自由性、瞬間性、装飾性、脱論理性、反俗性などを備える。

 本書は、「中心ー周縁」論の生み出した極めて豊饒な作品だと言える。子どもを題材にとり、子どもを周縁とみなすことにより、子どもの周縁性が次々と具体的に明らかになり、それと照らしあわされるように大人の世界の原理も見えてくる。もちろん、子どもは単なる周縁ではない。子どもには子どもの内的宇宙があり、論理があり、日常がある。この評論では、子どもの内的世界が矮小化されているきらいがあるので、より子どもに寄り添った、子どもの内面に肉薄した論考を次は読みたいと思った。