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加藤雅彦『ライン河』(岩波新書)

 

ライン河―ヨーロッパ史の動脈 (岩波新書)

ライン河―ヨーロッパ史の動脈 (岩波新書)

 

  ライン河を巡る独仏史。ライン河をめぐる絶え間ない紛争から、戦後のラインを介した同盟に至るまでの歴史を丁寧に追っている。細かい歴史的事件については読んでいただくのが一番だと思うから特に書かないが、フランス史やドイツ史の簡単な入門書としても使えると思う。

 「自然の国境」というものが、歴史的にいかに紛争の舞台になってきたかがよく分かる本であり、これはライン河に限らないのであろう。しかも、河という自然であるから、郷土愛の対象ともなり、ナショナリズムと結びついてきたりするから大変である。概して、二つの国の利害がともに関わるような河などは、片方の国がその所有を主張するよりも、両方の国がその共有を認め合う方が益するところが大きいと思う。そもそも共有することで互いの利益が最大化できるような土地などは積極的に共有を図り、狭隘な独占主義は互いの不利益を生み出すに過ぎない。