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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

長谷川宏『丸山眞男をどう読むか』(講談社現代新書)

丸山眞男の仕事を平明にまとめている本。主に、知的エリートと庶民との分離という観点、また近代的主体への希求という観点から全体像がまとめられている。丸山は自分たちエリートと庶民との間に距離を持ち続けた。また、丸山は自由で自立した近代的主体が日本に成立することを望んでいた。
第二次世界大戦へと突き進んだ日本の超国家主義的国家像において、天皇は精神的価値と政治的価値の両方を一元的に握っていた。だからその臣民たる国民に主体性が芽生えなかった。国民は精神的にも政治的にも天皇に従属しなければならなかったのだ。無規定的で自由な主体としての個人の登場が必要なのである。
日本の近代化の方針は福沢諭吉が示してくれている。福沢の反儒教主義は重要である。儒教の核心をなすのは社会秩序・規範・倫理であるが、福沢は自然・法則・物理へと向かったのだ。社会秩序に従属的である態度から、社会秩序に対抗する主体の精神の創出を目指した。
本書は丸山の思想を平明に解説してくれているが、少し違和感を感じた。というのも、丸山の文体というものは決して平明ではなく起伏に富んだものだからだ。これでは丸山の思考のデリケートさがあまり伝わって来ない。だが、読者はここから丸山の原典に当たるきっかけが与えられる。丸山の俊敏で機微に満ちた思考を味わうためにも、ぜひ丸山の原典に当たる必要がある。