読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

飯田洋介『ビスマルク』(中公新書)

歴史

 

ビスマルク - ドイツ帝国を築いた政治外交術 (中公新書)
 

  生い立ちから始まり、外交官からプロイセン首相、北ドイツ帝国宰相、ドイツ帝国宰相と歩んでいく道筋と、それぞれのキャリアにおいて振るった内政外交の手腕について丁寧に追っている本。

 ビスマルクは外交術に優れており、それぞれの政治状況に応じて臨機応変に、関係国に領土を与えたり同盟を提案したりして、自国の最大の利益を模索した。

 ビスマルクプロイセン君主主義を奉じ、自らの権益を守るためにも、伝統的なスタイルにこだわるユンカー政治家だった。「大プロイセン」として北ドイツにプロイセンの覇権を確立するのが目標だった。普墺戦争勝利後、ナショナリズムの力を借りて、プロイセンの覇権は確立した。だから、ドイツ帝国は、伝統的なプロイセン主義と全く新しいドイツナショナリズムの融合であった。

 本書はビスマルクの生涯と功績、また負の側面を追いながら、自己愛をプロイセン愛に同一化した保守主義政治家が、その巧みな外交術を行使することと外的な要因から、ドイツナショナリズムと不本意ながら手を組んでしまったり、領土付与という基本的な外交術から同盟という手法に鞍替えしたり、意想外な展開を見せていく筋を追ったものである。だが、この一筋縄でいかない政治外交術は、かれの外交的手腕の巧みさが生み出したものだと思われる。外交術における臨機応変さが彼の原理主義的なポリシーに打ち勝ったのだ。政治家の理念というものが現実の前でいかに可塑的にならざるを得ないかよくわかる。